磁化率強調画像 を用いた微小脳出血の予測因子の確立
2006年~2009年
滋賀県立成人病センター在職中に行った研究
共同研究者:福田篤志さん (この撮像法を作り、一緒に研究を始めた)
伊藤さん (福田さんに引き継いで、協力して頂いた)
MRI検査では、脳内出血や脳梗塞などの脳卒中に罹患していなくとも、60歳以上の人、高血圧症の人では、微小脳梗塞や微小脳出血、脳脊髄液の流れや神経線維の変性に関係している可能性のある脳深部白質病変が発見される頻度が高い。
昨今、磁化率強調画像と呼ばれる新たな撮像法が、従来のT2 star強調画像よりも鮮明に微小脳出血を検出することができるようになった。ただし、現時点では磁化率強調画像はどのMRI機種でも撮像できるものではない。
滋賀県立成人病センターのPhilips社製Gyroscan Intera 1.5T Master.を、WorkstationはEasy Visionを用いて、共同研究者の福田さんが独自に磁化率強調画像を作成し、倫理委員会に申請の後に通常のMRI撮影に磁化率強調画像を加えた。 (参考文献; 福田篤志, et al.: 磁化率強調画像のパラメータ最適化への試み, 臨床画像 Vol. 23 No, 1, 2006)
40歳以上の患者400人(男239人、女161人、平均年齢67.5歳)を対象として検査・統計解析を行った結果、
1. 脳深部白質病変や微小脳梗塞が見つかった人
2. 脳内出血の患者
3. 60歳以上の人
4. 高血圧症の患者
5. 認知症の患者
6. 脳梗塞で抗血小板薬の内服中の患者
の項目で、微小脳出血が有意に多く発見された。
中でも脳深部白質病変が微小脳出血と強い相関関係を認め、健常者においても脳深部白質病変が進行している人では、微小脳出血が高率に発見された。
<今後の展望>
微小脳出血は、将来の脳内出血の予測要因として多数報告されている。
この結果を踏まえて、高血圧症と診断されている60歳以上の人で、T2強調画像やFLAIR画像で脳深部白質病変が認められた場合には、積極的に磁化率強調画像を行い、微小脳出血を発見し、将来の脳内出血を予防すべく、厳重な血圧管理を行うなどの対策を推進した方がよいと考えられた。