病院勤労者の職場環境ストレス

京都新聞 2009年7月15日掲載
京都新聞 2009年7月15日掲載

2008年~2009

 

滋賀県立成人病センター在職中に行った研究

2007年頃 滋賀県立成人病センターでは全国の地方自治体病院の例にもれず、医師離職による診療科縮小、それに伴う大赤字に歯止めがかからず、病院の雰囲気が沈み続けていた。

そんな頃に、林 正彦副院長と川上 賢三副院長が発起人となって、病院改革プロジェクトチームが立ちあげられ、自分は病院改革推進ワーキンググループに参加して欲しいと誘いを受けた。

何とか病院を良くしていきたいと仲間で真剣に考え、この活動を通じて、その輪を大きく広げることができたと実感している。

その後、病院の雰囲気は良い方に変わっていっていたと感じられたが、自分は200912年で転勤することとなり、現状も変わり続けていると思う。

 

共同研究者病院改革推進ワーキンググループの仲間)

柴野主任看護師、宮下副参事、武田先生、寺島先生吉田師長、小田主任看護師、曽村副師長、診療情報管理室の林さん、総務課・経営企画室の村田さん、沼波さん

(今も良い思い出です。ありがとうございました!!)

 

アンケートの内容

項目;厚生労働科学研究費補助金労働安全衛生総合研究費研究「職場環境等の改善を通じたメンタルヘルス対策に関する研究」班(研究代表者:堤 明純)によって作成された『日本語版 努力-報酬不均衡モデル職業性ストレス調査票』23項目に、 ワーキンググループで考えた滋賀県立成人病センター固有の問題点と考えられた7項目を追加し、合計30項目とした。


時期20086

対象滋賀県立成人病センターの正規雇用,パートタイム雇用の職員 706

回収方法;アンケート用紙自体は無記名としたが、各部署に回収ボックスを設置し、ボックスに提出者名のチェックを行うことで回答の有無を確認し,未提出者にはアンケートへの参加協力を依頼した。


仕事ストレスの評価法日本人労働者 約2万人について行われた『努力-報酬不均衡モデル職業性ストレス調査票』による集計結果を参考にし、平均的日本の労働者の仕事ストレス=1.0  となるように設定した。

仕事ストレス = 1.7×(努力・報酬得点比-0.56)+ 1.0 (日本人労働者平均の仕事ストレスを1.0として計算)

仕事ストレスとは・・・

 疫学的に検証された『健康に影響を及ぼす可能性のあるストレス』を表しています。


回収率92%706人中632人)

回答者の職種看護師366人,看護助手20人,医師73人,薬剤師15人,放射線技師19人,検査技師35人,療法士22人,臨床士16人,事務職47人,その他12


パートタイム雇用を含めた全職員を対象とした集計結果

職種          回答人数      仕事ストレス

 1. 看護師           366           1.55

 2. 看護助手         20            1.41

 3. 薬剤師           15            1.28

 4. 検査技師         35            1.21

 5. 療法士           22            1.19

 6. 臨床士           16            1.16

 7. 医師             73            1.09

 8. 放射線技師       19            1.07

 9. 事務職           47            0.89

10. その他           12            0.66


このアンケート調査では、看護師のストレスが病院職員の中で突出して高かった。特に,看護師の仕事ストレスは1.55と高く、日本の平均的労働者と比較して55%高いという結果であり、実際に仕事ストレスが健康に影響を及ぼすことも証明されており、早急に対策が必要と考えられた。

一方で、アンケートを行う前の予想とは異なり、医師は仕事ストレスの比較的低い職種であった。

アンケート結果を詳細に検討した結果、医師は労働賃金に対する不満の蓄積や肉体的疲労がピークに達して病院を辞めるのではなく、勤務している病院への帰属意識が他の職種と比較して低く、より理想に近い労働環境、労働条件を求めて病院を辞めるのではないかと考えられた。

 

アンケート集計結果に基づいて、『医師に選ばれる病院』になるための改善策を立案した。

当時、病院固有の問題点として、回答一致率の高かった

『病院の方向性が見えない。』

『積極的に新しいことを学んでいきたいと考えている若手医師が少なく、閉鎖的な雰囲気。』

に対して、病院のビジョンを職員のみならず地域住民や患者にも明確にし,

専門医取得を目指す若手医師を確保するべく,病院と自治体が一体となって取り組んでいく必要があると考えた。

 

 

・・・その後、私は人事異動で2009年に病院を辞めることになってしまいましたが、

 2009年に院長が交代し、某大学病院のマグネットホスピタルとして大学人事のテコ入れが入り、多くの診療科の診療縮小が改善されているとのことです・・・